しょうがないこと
今夜は友人のライブ演奏を聴きにいってきた
いつもはシンセサイザーとか色んなキーボードに囲まれている彼女が
今日はピアノだけで演奏するのだという
飾りがない分ごまかしがきかないので
ちょっと緊張しているみたいだ
「実はこの長いバンド人生の中で
今回はじめて楽譜なしで演るのよ
これがまたなかなか覚えられなくてねぇ」
という彼女に
「やっぱり年だから?!」
と言いかけてやめておいた
わたしは自分を年だと思ってるけど
例え同級生でも彼女はどう思っているかわからない(笑)
お得意のたたみかけるような速弾きのピアノが始まった
そう、彼女はいつも完璧なのだ・・・と思ったら
なんと途中でミスった!
ただ
今回の観客の中でこのミスに気づいたのはほんの数人だろう
何しろこれは
70年代プログレッシブロックの代表グループである
EL&Pの『タルカス』という曲で
知る人は知っているけど知らない人には全くわからない
それをまた一人でピアノ曲にアレンジしているのだから
何となく元曲を知っている程度ではさっぱり気がつかないだろう
しかし
わたしはこの曲の初めから終わりまで
それはそれは隅々までよく知っている
聴きながら次の展開はすでに頭の中に流れていて
自分の中でもタイミングを取っていたのだが
ここで次の音が出るという時にわずかに間があいた
「やっちゃったよぉ・・・」
後で悔やしがる彼女に
「わたしだったら一旦止まったら
もう頭が真っ白になってその先もう進めないけど
ささっと立て直すところはやっぱりすごい」と
後で考えると全然慰めにもなっていないような事を言いながら
わたしの決まり文句「しょうがないよね」と結ぶ
先日
息子が3年間お世話になった塾の先生が
この5月で塾を閉鎖するらしいという話を聞いた
理由は
「家賃その他の維持費が払えなくなったから」
とのこと
大手の塾のやり方に疑問をいだき
理想に燃えて独自のやり方で生徒をたたき上げてきた先生だが
如何せん経済的な限界には勝てなかった
受験前の頃には一日の指導時間が7時間にもなった日があり
息子達がその頃密かに計算した先生の時給は
二百数十円にしかならないとのことだった
せっかく誠意を持って指導してくださる良い先生だったのに
でもこれもまたしょうがない
国会でもめている年金問題も
いつの間にか国民の負担増という結果になったらしい
おエライ人たちは納めていないものを
下々は強制的に持っていかれる
学校のPTA役員も
4月になると毎年もめて
最終的にいつもごねては逃げている人がいる
「絶対にやらない」と頑張る人に対して
「決まりを守らないのは絶対に許さない」と対抗する人があり
その怒りに費やされるエネルギーはかなり大きい
真面目な人は損をして
自分勝手な人が楽をしている
そんな理不尽な事がまかりとおっている世の中には
どこを向いても腹の立つことばかり
だから
それをいちいち怒っていたのでは身が持たないし
怒りは更に怒りを呼ぶ
若い頃はいろんなことによく怒っていたけど
今は「しょうがないね」が口癖になってしまった
その分、あまり腹も立たないし
健康にも良いような気がする
それでも
「しょうがない」は決してあきらめの文句じゃない
とりあえずそこで立ち止まり
冷静になってまた進み始めるための言葉なのだ
今日の演奏ミスを悔やんでいた友人は
今ごろもう次の事を考えているに違いない
わたしも同じように
いつも前を向いていたいものだと思う
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