災いに学ぶ


先週学校でけがをした息子だが
抜糸もすんで今日無事”完治”に至った
8針縫った傷跡はまだ生々しく
「これみてみて〜」と言われても
近くでじっと見つめる気になれない

そもそもなんでこんなけがをしたかというと
教室で野球ごっこをしていて
スライディングしたところに暖房器具の金属部分があって
それがちょうどひざにめり込んだらしい
まったく間抜けたことをと呆れつつも
傷の深さを想像するだけで寒気がする

息子が病院へ連れて行かれた頃
わたしは娘の参観日に出かけていて
帰ってきたところへ母がでてきて
息子が大変なけがをして8針も縫ったのだと知らされた
そのあまりに深刻な様子に
これはさぞかし本人も辛いだろう
寝込んでいるかな
と急いで家に入ると
その息子はパソコンの前にすわって
涼しい顔をして何か食べながらネットをやっている
わたしの想像と実際の息子の姿のギャップがあまりに大きいので
一瞬どうなっているのかと面食らってしまった

気を取り直してくわしい状況を聞き
傷の様子なども知らされたが
やはりかなりひどいけがのようだ
しかし
本人が全然痛いと言わないので
痛くないのかとたずねたら
「そりゃ〜痛いよ」という
じゃあなんで痛いって言わないの?
「痛い痛いと言っても何も変わらないから」
・・・・・うーん、、、それもそうだ
”痛い”と言ったところで痛みが軽くなるわけでもなし
ただそれで何となく発散するだけで
根本的には何も変わらない

そのあと息子の詳しい状況説明が続く
今回のけがの場所はちょうど左ひざの上なので
今の状態ではまったくひざを曲げられない
よって、歩き方が難しい
階段は特に大変だ
それでどうやったら少しでも歩きやすいのか
また、ターンする時の足の運び方など
自分なりに研究した成果を発表する

その様子がとても嬉しそうなので
けがをした事を楽しんでいるようだと呆れてしまう
次の日は
無理な姿勢で歩いていると
腰に負担がかかる事を学んだ

更に次の日には
ガーゼをめくって縫っているところをしげしげと眺めている
わたしにも一緒に見るようにと言うのだが
わたしはどうもこういうのが苦手で
横目でちらちらっと見るだけにしておく

そんな息子も
抜糸の日だけは憂鬱そうだった
数ヶ月前
やはり学校で彫刻刀で指をけがした時
ほんのひと針だったが
抜糸がとても痛かったらしい
今回は半分ずつだがそれでも一度に4針分も抜く
さぞかし痛いだろう

ところが
今回は意外なほど簡単にするする抜けたらしい
本人嬉しそうに
「あれなら自分でも抜けそうだよ」というので
思わず、やったらダメよっ!と釘をさした
小さい頃から何でも興味あることはやってみる方なので
本気でこれもやるのではないかと思えてしまうのだ

人間には個体差というものがあるが
同じ程度の痛みでも
人によって感じ方に差があるのだろうかと時々考える
そしてその差は
”恐れ”によって左右されるのではないかと想像する
少なくとも息子はわたしよりけがを恐れていない
傷を自分の目で確かめ
現実を直視している
わたしは傷を見る事もしたくない
すっかり気持ちが逃げ腰だから
ただ「どうなるんだろう・・・」との不安が先立つ

こういうのは生まれ持った性格の違いなのだろうか
夫は今まで”病気の問屋”と自分でも言うくらい
色んな病気やけがを経験してきたが
そのたびに「痛い痛い」というのをあまり聞かない
若い時からの椎間板ヘルニアは
ひどい時は歩く事もかなり難しく
それでも
長い間には自分なりに”動き方”を研究してきたので
唯一不可能な”靴下をはく”こと以外
わたしは何の手助けもしたことがない

その椎間板ヘルニアは手術も経験したが
自分でも専門書を熱心に読んで勉強し
実際に手術ができるほどの知識を身に付けていると
主治医からも感心されるほどになったらしい
だから今でも整形外科の分野は非常に詳しい

胃がんの手術をした時も
自分のカルテを仔細にチェックして
現状の把握に余念がなかった
夫にとって
”知る”ことは最も重要な事なのだ
災いを嘆いている暇はない

手術の前日には
”きれいなうちに”と
お腹の写真を撮ってくれという
手術が終ってからは
まだ麻酔もはっきり覚めていないうちから
酸素マスクの下で何をもごもご言っているのかと思ったら
点滴やら色んな機械等につながれている今の状態を
記念として写すようにと指示
”こんなチャンスは滅多にない”といわれて
そういえばそうだな〜と
半ば呆れながらもカメラを構える

今回息子が楽しそうにけがの説明をするのを見て
この時の夫の様子を思い出した
やはりこの親子はよく似ている(笑)

今日はまたお庭を見に訪れた人があって
お花はとても好きだけど
虫がついたりしてなかなか上手に育てられない
という話になった

お花にしても野菜にしても
自分で育ててみたい作ってみたいという人は多い
ところが
かなりの人が虫や病気の被害にあった時点であきらめてしまう
早いうちにちょっと対処すればすむものを
虫を見ただけで気持ちが引けてしまい
そのまま現実から目をそらしてしまうのだ
「もう見ないことにしました」
という話も聞く(苦笑)

実はわたしもこれでずっとつまづいていた
頑張ろうという気持ちはじゅうぶんあるのに
被害を見たとたん
くるっと後ろを向いてしまうのだった
しかしこれではいつまでたっても前へ進めないので
一念発起、農業関係の本を読みはじめる
そこでわたしは今まで何も知らなかったのだと知る
何も知らないから
どうしてよいかわからず不安ばかりが先行した
どれが害虫なのか
どれを病気というのか
知れば対処の仕方もわかる
中には対処の仕様もないものもある
それは潔くあきらめるのだ
いずれにしても知らなければどうしようもない

まだ子ども達が小さい頃
テレビの子ども番組のなかで
あるキャラクターがいつも同じ歌を歌っていた

♪困った時がチャンスです
頭の良くなるチャンスです〜♪

あれが何の番組だったか思い出せないのだが
なぜかこの歌だけは頭に残っている

昨日は
キュウリを小さいうち(直径1〜2センチくらい)に収穫し
ぬか漬けにした
これをぽりぽりと食べるとすごく美味しい
普通の大きなキュウリを漬けたのとは味が違う
この楽しみがあるから
家庭菜園はやめられない
今年は野菜つくりの大きな山を一つ越えた
一つ超えると次も越えられるような気がする

今ひとつ抱えている問題は
オクラが成長しないこと
実は昨年も苗が枯れてしまい
今年こそはと再挑戦したものの
枯れはしないが伸びもしない状態

まだまだ知らないことが多すぎて
頭の良くなるチャンスがいっぱい転がっている(笑)





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