百日紅の運命


先週に引き続き
またしても台風の到来、、
この前のは『13年前の19号並みの勢力』といわれ
バラなどの鉢物も早々と玄関に取り込み
昔を思い出しながらその時を待った
ところが
かなり近いところを通ったにもかかわらず
想像したよりもはるかに風は弱くて
「こんなのなら鉢を入れなくてもよかったなあ・・」と
翌日うんざりしながらまた元通りの場所に運んだ

被害がないのは当然喜ばしい事だ
だが、おかしなもので
念入りに備えをすればするほど
それに見合った規模の台風が来ないと
なんだかだまされたような気がするのだった
そして考える
「もう次はだまされないからね」

というわけで
一週間違いでやってきた今日の台風については
はじめから準備をする気もなく
それでも心の片隅にはやや不安ももちながら
「どうせ大したことはないだろう」と
自分に言い聞かせた

今朝
まだ風もあまり吹いていない頃
外でバラ鉢の側をウロウロしていたわたしは
これから出勤する近所の人にこう声をかけられた
「今回の台風はこの前のと同じと思ったらダメだよ
今のうちに片付けるものは片付けて準備をしておかないと」
うーん、、そうかなぁ〜、、

自分では「きっと大したことはない」と思っていても
人からそういわれるとやはり心配になる
わたしはすぐに鉢物を運び始めた
ただし今回は玄関の中にまで入れず
教会の入り口のところに並べておいた
ま、ここで十分でしょ・・・



それから
ちょっと買い物などで外出して帰ってから
お昼ごはんを食べようかという頃
急に風の音が強くなってきた
あら、やっぱり鉢物を玄関に入れようかな・・・
そんなことを考えていた矢先
子どもたちが「樹が倒れてる!!」と知らせにやってきた

急いでこの正面の扉を開けると
なんと目の前にはサルスベリの樹が横たわっている!
大正生まれの義父の祖父が植えたという
樹齢百年は越えていると思われる古木だ
「百日紅咲く頃」参照)



おまけに
壁にはわせているつるバラの太い枝も外れかかっている
凄まじい暴風の中
思わずその光景を呆然と見つめていたが
とにかく今できることといえばそこにある鉢物を
中に入れてやることくらいだ
庭の中で倒れている鉢はもう危なくて取りにいけない

それでも夫は
「この樹だけはちょっと移動させておかないと」と
暴風の中外へ出る
道路にはちぎれた太い枝が散乱しており
これも拾い集める
垂れ下がったつるバラはどうしようもないのでそのまま

その後
家の中にいても突風が吹くたびに耳がツンとし
このまま家ごと飛ばされてしまうのではないかというような恐怖感が
全身を包んだ

窓の外を見ると
雨のしぶきが白煙となってゴーゴーと流れ
むこうの家の屋根から次々瓦が飛んでいる
道路にはトタンや雨どいが散乱し
どの木も折れそうなほど激しくゆれている




うちの壁にもさかんに何かが当たる音がする
この建物には雨戸もシャッターもないから
もしこれが窓に当たれば割れてしまうだろう
そう思うと気が気ではない
というか生きた心地がしない
ここまでくるともう庭がどうなろうとどうでも良くて
ひたすら窓が割れませんように・・・とお祈りするのだった

人間せっぱ詰まると欲がなくなるものだ
こういう時にはつくづくそれを感じる
どうせなら無欲がそのまま続けばいいのだけれど
残念ながら危機を超えると
今度は庭の惨状を見てため息が出る

つい昨日
この時期にしては珍しくつるバラが咲いているからと
写真を何枚も撮ったというのに・・・↓



それが今日はこうなってしまった↓



このままではトゲトゲの枝が入口をふさいでいるので
明日は早々にまた壁へ取り付けなくてはならない

その他にも
通路を仕切っていた扉が壊れ
となりの瓦が飛んできて散乱しているので
ざっと片付けるだけでも明日いっぱいかかりそうな感じだ

 

そう思ってうんざりする一方
こうして写真を見ていると
あのトタンや瓦がもし人に当たっていたらと思うと
こうして皆無事であった事を本当にありがたく思う

今回お庭は
リニューアル後はじめての大きなダメージを負ってしまったが
サルスベリの樹がなくなったところを
またどんな風にしようかと考えながら
すでに模様替えの構想を練っているところだ
お庭はいつでも一から造り直せる

風がだいぶおさまった頃
折れてしまったサルスベリをチェンソーで輪切りにすると
なんと中が空洞だった
虫にやられたのだろうか・・・
あの大きな樹は”縁”だけで支えられていたわけで
ならばいずれはこうなる運命だったのだろう



この夏には
今までで一番見事に花を咲かせてくれたサルスベリ
図らずもサルスベリのページを作っておいて良かった

戦禍をくぐり抜けてきた古木の幹は
大きくて形も面白いので
これをお庭に上手く使うと結構洒落ているかもしれない
まだ具体的な構想は何もないけれど
明日は葉っぱを取り除きながら
どこにどう使ったらよいかも考えてみよう
樹としての寿命を終えたサルスベリだが
”その後”の運命はまだ続く。。




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