いいかげんな話



<11.それぞれの感動>

息子が社会人になって10カ月半が過ぎ
ついこの前まで「新入社員」と呼ばれた彼も
今日は2015年度新卒採用の会社説明会に「先輩社員」として参加した
若い社員の育成に力を注ぐ会社だからこそ
こうして「一年生」でも前線に出ていくわけだが
入社前に抱いた期待以上に
たくさんの仕事を与えてもらえることがとても嬉しい

2012年8月2日の記事に書いたように
就職活動中の息子が今の会社と出会った時 
感動したのは社長の考え方だった

(記事より抜粋)
『20世紀は貪欲な人が成功したが 21世紀は信用のある人が成功する』
 説明会で語られたこの言葉は
 目先の利潤追求型ではない良心的な事業運営により
 本当の意味で社会貢献できる企業こそが
 この厳しい時代の中で信用を得ることができ
 それによって自らもますます発展することを表している


多くの経営者がこの厳しい時代を生き残る方法を模索している中で
「信用」の重要性に目覚めている人とそうでない人の差は
その後の結果にはっきり表れてくるようだ
ある経済誌に、伸びる企業と行き詰る企業の特徴が指摘されていたが
前者は人材育成に力を入れ、後者は商品が売れることに力を入れているという
つまり、目先の利益を追いかける時代は過ぎ
良い社員を育てている会社が信用される時代になっていることに
気づく人と気づかない人がいる
あるいは、気づいても切り替えるのが難しい場合もあるだろう

このように
説明会における「信用」についての話は息子の心を引きつけたが
更にそれを確信させたのは社長自身のもつ「品の良さ」だった
逆に、これを感じなかったら「信用」の話も信用しなかっただろう
格好良い話だけならだれにもできる
問題はそれが本物かどうかだし
それを証明するのは、やはり人なのだ

こうして息子が言わば「一目ぼれ」したこの会社は
主に「免許事業」を展開しており
息子はそこの自動車学校に配属され
「インストラクター(教習指導員)」になった

実のところ、わたしは
この教習指導員つまり自動車学校の先生という職業が
普通に新卒採用されているとは知らず
警察関係の人がやっているのかなあ?くらいに思っていたので
(わたしの周りにもそう思っている人は多いみたいだけど)
息子からここを受けると聞かされた時はちょっと驚いたものだ
でも、車の運転なら夫に似てとても上手いし、何より大好きだし
18才で免許を取って以来ずっと無事故無違反だし
バイクも大型免許までもってるし
確かに息子には合いそうな職種かも?!とも思った

ただし、インストラクターになるためには
「教習指導員資格(国家資格)」を取得する必要がある
年に2回実施されるこの試験に早く合格しなくては
給料がいつまでも見習い待遇のままなので、それがかなり気になった
(いや、無資格のままでもちゃんと給料が出るというのも有難いとは思うのだけど、、)

ところが、後になってわかったことだが
息子はこの会社に行こうと決めるにあたって
「基本給」を全然チェックしていなかったのだ
え?わたしなら一番にそこを見そうだけどね?!(汗

昔から、息子の考えている事とわたしの思いとは違うことがよくあり
そのたびにわたしは
「この子は何も考えていないのではないか?」と心配したものだ
だが、今思えばそれらはみな、わたしと意見が違うだけにすぎず
彼は昔から自分なりに一生懸命考えているのだという事が今はわかる

一般的に親は自分の考えが絶対正しいと思っているものだから
子どもが違うことを考えていると「理解不能」になるわけで
そこから「子どもにまかせる」という発想にはなかなか至らない

わたしは時々、息子が小学5年生の時
算数の公式を「意味がわからないものは覚えられない!」と言って
丸暗記を拒否したことを懐かしく思い出す
あの時は、何で素直に覚えることをしないのかと本当に腹が立ったものだ
しかし、後に息子が数学好きになり
モノの動きを数式で表せることに感動する人間であることを知った時
意味もわからない、つまり「感動」の無い勉強には興味がわかず
向上もないことを知るに至ったのだった

息子が25歳になった今も
わたしにとって彼は「子ども」で
それゆえにその行動は色々気にかかる
親というものは幾つになってもそんなものなのだろう
ただ、今は息子にしても娘にしても
各々が「感動」した道に歩み、十分幸せそうだ

親子と言えど、すべての「感動」を共有できるわけではないので
これからも時々意味不明の事があるのだと思うが
とりあえず「この子は何も考えていないのではないか?」という不安はない

4月に入社し、7月の試験で合格した息子は
8月からインストラクターとしてデビューし
わたしがあれこれ心配したこともみな杞憂に終わった

一方、息子が感動した社長の経営理念が
実際にどのように会社に反映されていくのか
その理想と現実を、わたしは興味津々で見守っている

そして、たちまちこの10カ月の間にわかってきたことを
続いて書いていこうと思う


(2014.1.18)



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