3月5日と
6日の日記では
娘が仲間たちと共に
大学のお堅い「しきたり」に対してささやかな抵抗をしてきた事を書いたが
そのほかにも2年生の終わりには、学内演奏会で着るドレスについて
それまで白か黒しか認められていなかったのを
彼らの主張でカラードレスが認められた経緯もある
更には、3年になり、ミュージカル研究会を立ち上げた時には
正式に認められないまま活動を始めたが
3月の『サウンドオブミュージック』が非常に好評であったことから
今度は大学側から、再演を求められるに至った
また、ある小学校からも公演に来てほしいとの依頼がある等
彼らの活動も少しずつ学内外に知られるようになっていく
そのため、この一年間は
先生方の歌唱・演技指導協力まで加わって
昨年よりも更にグレードアップした形で
10日後の本番を迎えようとしている
そして
新年度からはここも正式な同好会として認められ
補助金を受けることもできるようになるらしい
こうして何かと”やらかしてきた”彼らだが
もっと自由に色々やりたい!との願いをかなえようとする一方で
実は彼らは自分の学校が好きなのだということを
娘から以前聞いたことがある
前にも書いたように(
「熱さの行方」参照)
中高一貫校時代のわたしも、お堅い学校の体質がイヤで
何かを変えたいと思ったものだけど
その頃のわたしは学校が嫌いだった
ここが娘たちとの大きな違いだ
言ってみれば、わたしは学校に対して不満をもっているだけで
学校自体が将来どうなろうがどうでもよかったし
良くなる事に協力しようなんて考えたこともなかった
しかし、娘たちのやってきたことは
もちろん自分たちがやりたいことをやってきたわけだけど
それらは結果的に学校の活性化につながるものとなっていく
それは、そこに彼らの心があったからこそだと思うのだ
カラードレスの件一つとっても
白黒ドレスだけの演奏会と、色とりどりのドレスの演奏会では
後者の方がお客さんにとっては魅力的だ
演奏技術さえあれば衣装などどうでもいい・・わけでは決してない
娘が小学校の低学年の頃
この音大の学生が出演する演奏会に連れて行った時も
その華やかなドレス姿に目をキラキラさせていたし
あれがもし全員モノクロ衣装だったら
娘の音楽や演奏会に対するイメージも随分違っていただろう
また、クラッシック音楽オンリーの音大でミュージカルをやることも
自分たち自身が楽しむと同時に
そこには音楽の楽しさを広く宣伝するという大きな意味がある
古い伝統に固執し、しきたりによってがんじがらめにされていたのでは
せっかく良いものを持っていても
それを世の中に示し、広めていくのは難しい
そんな中で
彼らは新しい風を吹き込む役割を果たしてきたように思う
そして、様々な「掟破り」に挑む彼らの「原動力」は
音楽が好き、学校が好き、との思い・・・つまり「愛」だ
一方、1960年代の学生運動の場合には
「学校を変えたい→社会を変えたい」との思いは共通していても
そこで原動力になったものは、社会に対する「怒り」や「憎しみ」だった
つい最近も、社会に「恨み」を持った人物が凶悪犯罪を犯しているように
行動を起こす際の原動力が何なのかによっては
人は無茶苦茶な方向に走ってしまう
いつの時代も人々は理想の世界を求めて何か行動を起こそうとするけれど
それが成功するか否かは
どれだけ賛同者や共感者を得ることができるかにかかっている
その時もし「恨み」や「怒り」といった負の感情だけを原動力にする動きであるなら
同じ感情を抱えた人からしか、なかなか共感を得られないかもしれない
というのも、こういう感情を抱えた人の言動は
しばしば過熱しがちで
行き過ぎると、威圧感や違和感を与えかねないからだ
復讐心に燃えると
そこには制御できない負のエネルギーが働くのが怖いと思う
一方、「愛」を原動力にした動きには、ちょうどいい「わきまえ」がある
「掟破り」と言っても
人に迷惑をかけたり憂さ晴らしをするのが目的ではないので
行動が行き過ぎないように、いい加減に落ち着いていくようだ
時には理解されない悔しさもあるけれど
トラブルを回避しながら上手くやっていけば
いつの間にか知らない人でもちゃんと評価し、応援もしてくれる
実際に、たくさんの応援を受けて、娘たちは今日までやってきた
あとは、自分たちが
精一杯の歌と演技でミュージカルを成功させることができるかどうかが重要だ
いくら理想を語っても、やってる事がダメなら信用はないから、、
この少子化の時代において
特に地方の私立音大の存続は学生の質にかかっている
学生自身が楽しく生き生きと生活していなければ
誰がここへ行きたいと思うだろうか
そして学生自身が何か行動しなければ
誰が道を用意してくれるのだろう
「不景気な社会が悪い」と言ってしまえばそれまでだ
もし本当に音楽が好きなら
その思いを原動力にして前へ進む
そんな若者たちの起こす風にわたしはこれからも注目していきたいと思う
(2014.3.10)
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