「To Dreamers」
◆ 3 ◆
「いったい・・・どうなって」
僕は噴水の前で、おもいっきり困惑していた。
昨日、青年は、足取りは危なっかしかったが、無事居住区の自宅(ボックス)に辿り着き、ベットに転がると何か考えこんでいたが、そのまま寝込んでしまったのだ。
朝になって、どうも気になった青年は、20世紀ライブラリに来てみた。
しかし、田中が入って行ったはずの入り口がない。しかも、建物の左側は噴水になっていた。今までは植え込みの陰になっていたし、気にしたこともなかったから、昨日は全く気がつかなかったのだ。
僕は、あんまり良くない頭脳をフル回転させて考えたが、やっぱりどうにもこうにも説明の付けようがないので、昨日の事は最初疑っていたように、やっぱり夢だったんだろうと自分を納得させる事にした。でも、納得したくない自分がどこかに残っていた事は確かなんだけど。
せっかく来たのだからと、僕はライブラリを見学したが、今日は思いのほか人が多くて、うっとおしかったので、少しだけ居てすぐに出てしまった。
そんな僕を、雑踏の中からじーっと見守る者がいる事など、まったく気づきもしなかった。
◇ ◇ ◇
僕のボックスの前に制服の男が3人立っていた。中でも偉そうな男が言う。
「ちょっと君。君は彼か?」
妙な質問をする。
面白くなかったが、こういう輩には下手に逆らわないほうがいいかなと、そいつの差し出した書類を見てみた。個人認識ナンバー、居住ボックスナンバー、その他諸々、僕に関する情報が記載されている。全部は読まなかったが、ちょっと見ただけでも、明らかに僕だとわかる。
「ここに書いてあるのは僕の事みたいですが・・」
「認めたな。一緒に来てもらおう。」
「え? 何処へ? いったい何だって・・」
流石に僕は慌てた。何も考えずに答えてしまった事を後悔した。
「君には、遺伝子法、第3章7項違反の疑いが掛けられている。」
「遺伝子法・・違反?」
さっきから、ニヤニヤしながらみていた感じの悪い男が、無意識に後ずさっていた僕の腕を鷲掴みにしながら、吐き捨てるように言った。
「お前がクローン人間だって言ってんだよ!」
20世紀末、DNA研究の躍進により、クローン技術は目覚ましい発展を遂げた。それは、食肉産業や医療等、様々な分野に於いて、人類に素晴らしい功績をもたらした。同時に”非人道的な行為は行うべからず”という理念に基づく法律が、いかなる人種にも適用される遺伝子法として発令されていた。
しかし、いつの頃からか、クローン人間が密造されるようになり、ついには遺伝子の盗難、売買までされるようになり、街には失敗作・・つまり奇形が溢れた。
その後、人類もさすがに”種の危機” をその身にひしひしと感じるようになり、選択を迫られていた。ここぞとばかり、以前から意義を唱え続けていた宗教団体が力を増大してきた事も手伝い、遺伝子操作に関する技術・情報の全てが恒久的に凍結・抹消された―――― 筈であった。
僕の身体は一応抵抗をしていたが、心の方は、不安や疑問で、もう何がなんだかわからなくなっていた。男たちにズルズルと引きずられるように歩いている僕の前に、男が立ちはだかった。
田中だった。
「その人は渡しませんよ!」
「何!」
「おい、こいつは誰だ!」
「さぁ・・僕にもよく・・」
「その人を放しなさい!」
田中は何を考えているんだろう。妙に強気だ。
「お前なぁ、俺達を何だと思ってるんだ、逆らって・・」
「放っておきなさい。」
「しかし、次長・・わかりました。行くぞ、ほら。」
「放さないと・・・」
田中はどこからか、カメラを取り出しこっちに向けた。
「あ、お前、やめろ!」
「構わん。どうせ、放送できやしない。」
田中が動いたと思うと、そのカメラからすごい閃光が走り、僕は意識が遠くなった。
◇ ◇ ◇
「孔明様・・・あ〜るが、彼をどこかに飛ばしてしまったようですが。」
「ほほう、やってくれますね。」
「笑っておられる場合ではないのでは。」
「何、クラヴィスの水晶球ですぐ見つかるでしょう・・・・」