「To Dreamers」
◆ 7 ◆
「――――そして、奇形が地上に溢れ、遺伝子操作の技術は凍結されましたが、現存するクローンや盗難遺伝子を
野放しにして置くわけにはいかなかったのです。そして全て消去・・されました。」
「消去・・・って。」
「処分されたのです。」
「そんな・・・物みたいに・・・」
「そう思わねば、とても実行は出来なかったのでしょう。公式記録にも『消去』と記されている筈です。」
「そんな・・・」
「それが、正しい選択であったかどうか、というお話はやめましょう。物事はスタンスの違いによって様々な様相を呈しています。
当事者でない者は、肯定や否定を容易に出来ますが、それは無意味に等しい・・・。」
「く・・・っ」
「数10年の間、冷凍受精卵などから生まれたクローンの捜索、処理は続きました。
しかし、時の執政者の考えに依っては、検査で異常が認められない個体に限り、処分を免れた例があります。」
「え・・」
「あなたの記憶は、多分、検査か引き取り手をまっている時のものでしょう。」
「引き取り手・・・」
「クローンの引き取り手には、相当の保護費が付与されていました。」
「持参金が付いてたって事なんですね。」
僕は、かすかに覚えていた両親の愛やぬくもりさえも、かき消えてしまったような寂しさに襲われた。
「あなたのご両親は・・・・いえ、やめておきましょう。いずれ判ることですから。」
「なんの事です?」
ムウは思わせぶりな含み笑いが歯がゆい。
「CKは今でも活動を続けています。ご両親は、彼らのテロによって亡くなりました。」
「テロ? CK?」
「表向きは、事故になっています。CKとは、クローン抹殺を己が使命と信じ込んでいる狂信者達です。
あちこち、組織に入り込んでいるのですよ。」
「じゃあ、僕を捕まえに来たのは。」
ムウは、コクンと頷いた。
「書類の束をもっていた・・」
「あなたの素性が記されていたのですね。」
「全部、読まなかったんだ・・・。」
――――お前が、クローン人間だっていってんだよ!――――
僕はあの時、言われた言葉、忘れようとしても忘れられなかった言葉が、また頭の中を回り出した。
「僕は、誰かのコピー。まがいもの。」
「そっくり、そのままという訳ではありませんよ。
DNAのコピーですから、持っている素質、つまり、血液型とか潜在能力などは全く同じですが、
人間は育った環境に左右されますから、同じ人にはならないのです。」
「僕が誰のクローンかも書いてあったんだろうか・・・」
ムウは、黙っている。
「あなたは知っているんですね。」
ムウは静かに微笑んでいる。
「どんな人なんです。いつの時代の・・・クローンを作るくらいだから、何かに秀でた人なんでしょ。
僕の知ってる人物って事は・・・・ありませんか?
知っても、どうしようもない事はわかっています。でも知りたいんです。お願いです。教えて下さい。
おねがい・・・です。」
僕は、ムウの笑顔に腹立ちを覚えつつ、泣きながら頼んだ。
本当を言うと、僕は、僕が誰のクローンであろうが、興味はなかった。
ただ、僕の中に湧いてきた一つの疑惑が、どうしてもそれを知りたがっていたのだ。
「あなたがこの時代にこれたのはどうしてでしょうか。」
「・・・・・・・・」
ぼくはうつむいて歯をくいしばっていた。
「あなたの身近な・・そして大切な・・。」
「し・・そうなんですね・・」
顔をあげると、そこにムウはいなかった。