ちょい推薦
<<少女の瞳>>
まだ幼い少女の瞳は知っていた
「死ぬこと」の意味を
自分の名前さえ漢字で書けないけど
彼女はもう知っていた
「ずっと会えない」ということを
知っていた「遠いところ」は
どんなに頑張って歩いても
たどり着けない所だということを
弱っていく私を見ながら彼女は泣きじゃくる
彼女は前から気づいていた
私さえも失ってしまう事を
小さな心に集まっていく悲しみの涙
私の前でどこまで出しているのだろう
彼女は初めて会った時のことを
大人になるにつれて忘れていく
そして、可愛らしい瞳の中に
いつの日か私の姿はなくなる
真っ白な消毒の匂いがする部屋
この長い距離を彼女は歩く
毎日、何時間もかけて歩く
彼女は誰よりも知っていた
命というものの在り方を
幼すぎる彼女を置いて
私はもうすぐ旅に出る
心残りはたくさんあるけれど
彼女は生きてくれることを
ちゃんと知っているから
親の愛 たくさんは無理だったけど
これからも見続けているから