真宗大谷派 円光寺 本文へジャンプ

  ニューエイジ・スピリチュアル・精神世界 1

 生まれ変わり
 
1,ニューエイジ・スピリチュアル・精神世界とは何か
2,私とニューエイジ
3,ニューエイジ・精神世界の問題点
4,ニューエイジの霊魂観

レイチェル・ストーム『ニューエイジの歴史と現在』 角川書店


谷田和一郎『立花隆先生、かなりヘンですよ』 洋泉社 

福本博文『ワンダーゾーン』 文藝春秋

櫻井義秀『霊と金』新潮社

  1,ニューエイジ・スピリチュアル・精神世界とは何か

 「ニューエイジ」とは文字通り「新しい時代」ということです。

「人間の意識の変革が新しい時代を生み出す。それが霊的な世界である」(レイチェル・ストーム『ニューエイジの歴史と現在』

 霊性に目覚め、意識のレベルが向上する時代。今まで隠されていた霊能力、超能力が当たり前のことになり、あらゆる存在(人間にかぎらない)の心が通じ合うので、お互い愛し合い、争いはなくなる。愛と平和と調和の時代。
 ニューエイジの主張によればそういう時代がまもなくやって来るそうです。

 ニューエイジ・精神世界は非常に幅広い概念ですし、人によって定義が異なるので、どういう意味なのかつかみにくいのですが、こういうものだという雰囲気を知るために、いくつかの文章を引用しましょう。

 精神世界のブックカタログにある項目です。これで何となくイメージがつかめると思います。

「エコロジー・菜食主義・イルカ・環境運動・・神秘主義・心霊主義・神智学・死後の世界・シャーマニズム・道教・ヨーガ・マンダラ・禅・瞑想・気功・東洋医学・ホリスティック医療・代替医療・臨死体験・チャネリング・トランスパーソナル心理学・自己啓発・自己実現・無意識・ユング・セラピー・ヒーリング・量子力学・超能力・占星術・UFO・水晶・超古代文明」

 次はニューエイジとは何かと説明した文章です。


「ニューエイジというのは、1960年代後半から70年代にかけて流行した世界的なムーブメントである。ベトナム反戦運動の盛り上がりや公害の発生などが、これまでの科学万能・発展至上主義的な考え方では必ずしも世界は良くならないという批判をもたらしていた。ヒッピーやドラッグ文化が流行したのもこの時代である。
 この行き詰まり感を打破するために、今までのような「進歩と発展」ではなく、「平和と調和」を目指す価値観こそが人類の未来につながるのだ、とする考え方が生まれてきた。これがニューエイジ思想である。きわめて神秘主義的な傾向が強い。」
(谷田和一郎『立花隆先生、かなりヘンですよ』

「ニューエイジ運動(霊性復興運動)は、かつての世代が盲信してきた近代的合理主義や伝統的キリスト教への反発から、東洋思想や神秘主義などを積極的に採り入れ、内面世界を追求してゆく大衆運動が始まった。やがて宗教文化的な側面ばかりでなく、ニューサイエンス、エコロジー、潜在能力開発、自然医学、ヒーリングなど領域が拡大されてゆく。
 日本にもニューエイジ関連の書籍が一般書店の「精神世界」というコーナーに置かれるようになった。それらは、東洋思想、神秘主義、ヨガ、呼吸法、占星術、輪廻転生、チャネリング、自己開発、環境保護など「意識変容」がテーマであった。ニューエイジ運動の中には、終末論や過激な社会変革を唱えるものも含まれていた。オウム真理教の信者には、ニューエイジ思想に強く影響された者が目立ったのである。」
(福本博文『ワンダーゾーン』

 島薗進は、霊性(スピリテュアリティ)追求の運動がアメリカではニューエイジ、日本では精神世界だとし、それらを含みつつ、より広い範囲の個人的霊性追求運動として新霊性運動という語を提唱しています。そして「新霊性運動は新宗教以後の宗教運動」であり、今では「宗教」が「スピリチュアリティ」にとって代わられようとしているそうです。

「この運動の目的を一言で言えば、自己自身の意識を高いレベルに変容させ、宇宙的意識に融合していくことです。」(島薗進『新新宗教と宗教ブーム』

「新霊性運動の形態はまことにさまざまだが、共通する考え方の特徴を一言で述べるとすれば、「自己変容」の追求ということになる。
 新霊性運動は「自己変容」を追求すると述べたが、多くの場合、それは「意識変容」と結びつけられている。個々人が瞑想やその他の修行、技術を用いて日常の醒めた意識とは異なるレベルの意識や心のレベルに気づき、そこに接近していくことに高い価値を置くのである。
 異なるレベルの意識や心とは、本来的な自己であり、魂とよばれるものに通じている。それは自分が生まれる前の世界や死んだ後の世界とつながっている可能性がある。また、個人の心や身体を超えて、宇宙や自然の力とつながっているにちがいない。
 意識や心の変化を進めることは、環境との調和的関係を促進することである。それによって自己の運命が変わるだけでなく、さらには世界や宇宙の変容にも寄与していくことになる。このように個人の醒めた合理的意識を超えて新しい考え方、感じ方を広めていくことによって、近代文明のゆきづまりを超えていくことができ、人類の進化の新しい段階を切り開くことになる。」
(島薗進「新霊性運動・ニューエイジ・精神世界」『新宗教時代 5』)

 島薗進『精神世界のゆくえ』
では、ニューエイジャーの主張をまとめて、次のような思想・信念内容のリストを作っています。(Bブロック、Cブロックの各項目の説明は省略しています)

「Aブロック
1,自己変容あるいは霊性的覚醒の体験による自己実現
 自己の心身において生じるある種の変容体験、とりわけ異なる次元のリアリティーに触れることでより高い、またより本来的な自己とリアリティーに近づいていくことができるし、そうすることが充実した人生の鍵である。

2,宇宙や自然の聖性、またはそれと本来的自己の一体性の認識
 高次の、あるいは本来的なリアリティーは宇宙や自然のうちに内在する。それはまた霊性的な自己ともつながっている。量子論や現代科学の展開はそうした本来的なリアリティーの実在を指し示している。

3,感性・神秘性の尊重
 過剰な知性や醒めた意識による批判意識や恐れを抑え、感性を尊び、神秘体験や超常的な意識体験にも心を開いていくことによって、本来的なリアリティとの接触や自己実現が可能になる。

4,自己変容は癒しと環境の変化をもたらす
 個々人は高次の意識にふれることによって現実を変化させていくことができる。肉体的には癒しがもたらされるし、社会的には自然や他者との調和が可能になる。健康な自己と社会がもたらされる。

5,死後の生への関心
 身体の死後、意識や魂にあたるものがなお存続する。あるいはその可能性が高い。臨死体験は死後の生の可能性を示唆しているし、その他にも死後の生を示唆する現象はある。少なくとも死後の生に強い関心をもつことで、死を意識しつつ動揺しない生き方ができる。

6,旧来の宗教や近代合理主義から科学/霊性の統合へ
 合理性を否定する伝統的組織的宗教と、精神と物質を二分する二元論に固執する近代合理主義が現代文明のゆきづまりをもたらしている。かわって科学と霊性が統合されているような知や考え方が登場しており、こうした方向こそ未来を切り開く。

7,エコロジーや女性原理の尊重
 調和を重んじる霊性開発の思想と態度は、自然や肉体に対する支配ではなく、それらとの調和を求めるエコロジーの考え方に通じる。また、父権的な男性支配を是正して女性原理に適切な地位を与えようとする動きとも一致する。現代の霊性追求は人類全体の意識と文明の大きな変容と連動している。

Bブロック
8,超常的感覚や能力の実在
9,思考が現実を変える
10,現代こそ意識進化の時代
11,意識変化は宇宙的進化過程のひとこま

Cブロック
12,輪廻転生とカルマの法則
13,地球外知的生命との接触
14,過去の文明の周期と埋もれた文明の実在
15,人体におけるチャクラや霊的諸次元の存在
16,水晶・音・香・場所などが持つ神秘力
17,指導霊の実在
18,体外離脱や誕生前記憶の体験による霊魂の存在の確認
19,チャネラーやシャーマンの真正性」


 Aブロックは新霊性運動の支持者の多くが同意するだろう項目、Cブロックは典型的なニューエイジャーならば全部を持っている、Bブロックはその中間だそうです。

 海野弘はニューエイジの中のうさんくさい部分を精神世界と言っていますが、このリストを見ますと、Aブロックですら十分うさんくさいのではないでしょうか。

 島薗進は梅原猛と湯浅泰雄の仕事を紹介し、
「日本の知的エスタブリッシュメントの相当部分が、新霊性運動に共鳴する方向に進んできているといってよい。」
と言い、そして、そのことを示す例として、気の研究をめぐる動きをあげています。
「日本人体科学会が結成された。この会は気や東洋医学の研究を中心に、心身能力開発法、深層心理学や心身医学や超心理学など、心身相関に関わる諸問題を討究しようという学会である。」

 この学会を多くの新聞が好意的な記事で紹介し、数多くの著名な学者や知識人らが発起人に名を連ねているそうですが、もしもそれが本当なら、日本の将来はどうなるんだろうかと心配になります。