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角膜移植体験記.


おしながき

はじめに.

 記憶だけを頼りにしていますので、何年も前の部分などは、時期や期間などは記憶があやふやになっています。また円錐角膜にしても角膜移植にしても個人差が大きいので、ここに書かれていることは私個人の体験でしかなく、参考程度にしてください。


円錐角膜発覚.

最初の診断.

 1987年8月、新しい眼鏡を作ろうとして視力測定してみると、左目の乱視がありえないことに。数日後にちょっと離れた街の大きい病院で診察を受けたところ、円錐角膜との診断でした。左目はかなり進行した状態、右目は軽い状態です。医師から円錐角膜について詳しい説明を受け、その日のうちにハードコンタクトを作りました。
 思い出してみると、中学生くらいの時から、本を読むとき両眼だと読みにくく感じることがときどきありました。当時はまだ乱視程度でしょうが、これが円錐角膜の始まりだったのでしょう。

 ハードコンタクトに慣れるまでの3日間、レンズを入れている間は涙が止まらなくて、まともに見えなかったので、ずっと家でジグソーパズルをやってました。しかしそれでも2014ピースのパズルは完成せず。いかん、脱線だ。
 4日目から急に、レンズを入れてもなんともなくなました。眼鏡と違って視界を遮る邪魔なフレームも無いし、寝転がってもフレームが邪魔にならないし、両眼ともよく見えるので、快適です。
 この時の視力は、裸眼L=0.1/R=0.1、矯正(HCL)L=0.8/R=1.5。


角膜裂傷.

最初の角膜裂傷.

 1989年10月の夕方、もうコンタクトも外して自宅でテレビを見ていると、なんとなく左目が見えにくい感じが。鏡で見ても異常なし。見えにくい感じは2〜3時間くらい続いたと思います。何度も鏡で確認していたのですが突然、左目の黒目の一部が、白く濁ってしまいしまた。白くて丸い「たんこぶ」のようなものが角膜の上に出来ています。ほんの1〜2分前に鏡で見たときは見た目に異常なかったのですが、痛みもなにも自覚症状が全くなく、突然起きました。利目が右なので、視力の変化に気付くこともなし。

 後日、円錐角膜と診断された病院に行くと、とりあえず圧迫眼帯をして様子を見ることに。当時はこの病院から離れた場所に住んでいたので、後の治療は近くの病院で行うことに。
 近くの病院では、まぶたの内側に軟膏を塗った上で、圧迫眼帯をしながら経過観察することに。
 このとき角膜移植の申請をしました。順番待ち行列の最後に追加されて、ドナーが見つかるまで待つだけです。この時の主治医は女医さんだったのですが、手術については、笑いながら「簡単だから」なんて言ってたし。内心「え〜、本当ですか???」と思ったのですが、慣れた医師にとっては角膜移植の手術は難しくないのでしょう。

 圧迫眼帯をしてから数週間で、左目角膜の「たんこぶ」は目立たなくなった記憶があります。その後も3ヶ月くらいは圧迫眼帯をしてたかな。その後は目薬での治療をしたと思います。
 当然このときから、左目はコンタクトは使えず。視力は、裸眼L=?/R=0.08、矯正R=1.5。


2回目の角膜裂傷.

 ちょうど1年経った頃、またしても角膜裂傷の「たんこぶ」が。前回と同じように圧迫眼帯をしました。しかし圧迫眼帯って、効果あるんでしょうか? ほとんど押さえつけれていないと思うのですが。ただ強制的に目を閉じっぱなしにさせるという以上の意味がないように感じます。
 今回は前回ほど「たんこぶ」が大きくないので、2〜3週間ほどで目立たなくなったと記憶しています。圧迫眼帯も2ヶ月足らずで終わりましたが、この時は軟膏も併用してました。
 1年順番待ちしましたが、角膜移植の順番はまだ回ってこず。


ちょっと回復.

ハードコンタクト使用再開.

 1991年、角膜移植の順番待ちを2年ほど続けている間に、左目の視力がある程度視力が回復してきたので、ハードコンタクトを使用することになりました。左目には新しいコンタクトを作り、視力は裸眼R=0.08/L=0.02、矯正R=1.2〜1.5/L=0.4〜0.5。

 視力が出るようになったので、医師の判断で角膜移植の申請を取り下げ。
 2度の角膜裂傷を経験しながらもハードコンタクト使用で0.4〜0.5の矯正視力が得られるので、視力には困らず。しかし時期によっては左目の異物感がひどく、角膜表面に傷が付くようにもなってきました。医師の判断により目薬の種類を増やしてみるとともに、1週間のうち6日だけコンタクトを使用して1日コンタクトなしとか努力もしてみました。
 目薬に含まれる成分のせいかコンタクトに汚れが付着するのが早く、また型があわなくなったりもするので、1年毎にコンタクトを作り直していました。それでも一時的にコンタクトの使用を休止しなければならないくらいに角膜表面の傷が増えたりを繰り返すように。
 ハードコンタクトを入れればそれなりに視力が出るので入れたいのですが、入れて角膜表面の傷が増え始めるとイタイし、目薬を使っていても甲斐なく、そのうち入れられなくなるしの繰り返し。


ちょっと安定.

 数年すると、前記の痛みは時々しか起こらなくなりました。夏冬のエアコンガンガンで室内の空気が乾燥する時期くらい。もともと私の涙量が少ないせいもあると思います。医師の判断で目薬の使用もやめました。何かしたのかって、何もしていません。勝手にそうなりました。視力は裸眼L=0.02/R=0.08、矯正L=0.4〜0.5/R=1.2〜1.5と変化なし。

 この頃引っ越しのため病院を替わり、総合病院から、いまも通っている個人経営の医院に乗り換えました。

 さらに数年後、また左目に痛みを感じるように。ここでハードコンタクトの下にクッションとして、ソフトコンタクトを入れることに。この方法では多少矯正視力が落ちることもあるそうですが、これで快適になりました。3枚のコンタクトの扱いはめんどうですが、快適に見えるのには替えられません。
 視力は裸眼L=0.02/R=0.08、矯正L=0.3/R=1.2〜1.5に。左目の矯正視力が少し落ちたが、まだ問題なし。


ついに角膜移植.

審判の日.

 2007年くらいからゆっくりと左目の矯正視力が落ち始め、2009年くらいにはついにハードコンタクトを入れているのに0.1しか出ないということに。これまでにも一時的に視力が少し落ちても2〜3ヶ月で戻ることもあったので、しばらく様子を見ていたのですが、1年経っても戻る気配なし。両目を開けていると文字が読みにくい、乱視が強くなったような感じです。
 2010年の春、医師に「もうちょっと視力を出せないか」と相談してみたところ、「このままの視力で放っておくか、視力を回復させたいのなら角膜移植しかない」と言われてしまいました。2度の角膜裂傷を経験しながらも視力が出るようになっていたし、コンタクトを作り直せばどうにかなるだろうと思っていたので、ショックorz。しかし円錐角膜と診断されたときから、いつかは来るのかもと覚悟していたことなので、すぐ復活( ̄_ ̄)。
 この時の視力は裸眼L=0.02/R=0.08、矯正L=0.1/R=1.2〜1.5

 今通っている医院ではこの手術は出来ないので、手術の出来る近くの病院を紹介してもらい、翌月行ってみました。そこでは初診なのですが、やはり「手術以外に視力回復の手はない」とのこと。この病院はドナーの順番待ちが短いので、その日のうちに手術の日程まで決めてしまいました。最速の日程で2か月後でした。


手術前.

 やると決まったら術前検査なるものがあります。麻酔を使うので麻酔への適合性とか、その他に視力回復を妨げる要素はないかとか、検査します。採血のほか、暗室に入って電極付きコンタクト入れて、眼底の検査とか、2回に分けて計2日間で検査しました。結果、私の場合はまったく問題なし。
 あとは、手術と入院に関して説明があるくらいかなー。

 その後は入院中の生活に必要な物を揃えるくらい。それと、手術をすると決めてから実際に行うまでの日々は、コンタクト使用禁止です。あんなことやこんなことや何かワルイ状態になって手術不可能になるのを避けるため。


はじめての入院、はじめての手術.

 2010年8月、人生始めての入院です。もちろん手術も始めてなら、点滴でさえ経験なし。手術日の前日に入院しましたが、この日は日曜のため院内の説明くらいで終了。
 当日は、朝に診察があり、手術の予定は16:20からでした。午後の手術開始が14:00からですがほとんどは白内障の眼内レンズなので、トラブルの起こる確率高い手術は後回しにしているようです。手術後はしばらく風呂も禁止なので、早めに入浴も済ませておきます。手術の1時間くらい前までは、わりとヒマです。適当に本とか読んで過ごしてました。しかしその間も病棟では看護士がバタバタと手術の準備をしている様子がわかります。
 手術の時間が近づいてくると、看護士が呼びに来ます。手術着に着替えて準備完了。念のためでオムツもしました。全身麻酔で意識がないとはいえ、お漏らししてしまったらトラウマになりそうですから。

 まだ元気なので歩いて手術室の手前の部屋まで移動。ここでまな板手術台の上に乗っかって、ドキドキしながら順番待ちです。手術台がちょっと小さくて足がはみ出そうとか、看護士に笑われました。
 手術の直前で全身麻酔用の点滴を準備し、順番が来たら手術台に乗ったまま手術室へ。これで自分の角膜ともオサラバなのかぁ、なんて。「麻酔入れまーす」なんて声が聞こえたと思ったら、即意識を失いました。

 次に気がついたのは、何度も名前を呼んでる看護士の声が聞こえたとき。すでに手術室を後にし、エレベーターから出て病室に向かうところでした。手術中の記憶は全くなく、綺麗なお花畑の夢を見ることもありませんでした。時刻は18:00くらいだったと思います。予定どおり2時間ほどで終了していました。
 病室に戻ってからも1時間は安静が必要ということなので、そのまま寝てました。1時間後に看護士が様子を見に来たところで目が覚め、起き上がってみましたが、左目は眼帯をしていることもあり、ちょっとふらふらしてました。手術後3時間は食事出来ないということなので、この日は夕食抜きです。ジュースを2本飲んだだけですが、それだけで十分に感じるくらい、何か非常に疲れたような感じでした。


想像を絶する痛み ってこれですか.

 この日はもう何もやる元気もなくそのまま就寝したのですが、夜0:00くらいだったか左目の痛みで目が覚めてしまいます。我慢できないくらい痛いのでナースコールをぽちっとな。やって来た看護士に痛みを告げると、痛み止めの注射をうってくれました。肩にうつのですが、またイタイし。しかしよく効いたので、再びおやすみなさい。
 が、しかし、また左目の痛みで目が覚めました。時計を見ると4:00過ぎ。20分くらい我慢したけど、やはり耐えられなくなって2回目のナースコールをぽちっ。ほんとは連打したい気分。はやく来てくれぇぇぇ〜 と思いつつ待つこと数分、やってきた看護士に痛いと告げると、「さっきの注射は1回しかうてないから、ちょっと効くのが遅いけど別の薬にする」といって飲み薬を持ってきてくれました。やはり効き始めるまでが遅く、また20分くらい我慢するはめに。痛みが引いたらまた寝るだけです。

 翌朝、手術後はじめて食事らしい食事をとれました。いや腹減ってたわー。
 毎朝、入院患者の診察があるのですが、それを待っている間にまた左目の痛みが。もうすぐ診察だからと思ってなんとか我慢。診察の番が来て、眼帯を外して目を開けたところ、痛みがすう〜 っと引いていきました。手術後は移植した角膜を保護するためのソフトコンタクトを入れるのですが、入れたまま寝るのは初めてなので、慣れてなかったのかもしれません。


手術直後の回復.

 診察の結果は異常なし。執刀した医師からも、手術がうまく行ったことを告げられました。
 この時、手術後始めて、移植した方の目を開けたのですが、想像以上に見えません。何もかもがボンヤリとしていて、物の輪郭などほとんど判別不可能。手術前の方が裸眼でも100倍見えていたでしょう。こんなに見えなくていいのかと心配になるくらい、本当に見えません。
 しかし視力の回復は速く、4日くらいでそれなりに見えるようになり、その後も注意して観察していれば日々変化するのがわかるくらいです。
 手術後の1週間はずっと眼帯をしたままで、外すのは目薬を入れるときくらい。

 手術から10日後の朝の診断で、主治医から「これなら予定どおり2週間で退院できる」と言われました。その後トラブルもなく予定どおりに2週間で退院。
 移植した左目だけで物を見ると、以前より2割りくらい小さくものが見えるようになった感じがしました。距離感も、3m以内にある物は以前より近くに見えるような感じ。裸眼の感覚も以前とは違い、場所によって見えやすいところ、見えにくいところがあります。
 この時の視力は裸眼L=0.1/R=0.08、矯正R=1.2だったと思います。


入院生活.

 手術後の1週間はテレビも読書も禁止で「出来るだけ目を閉じておいて」と言われているので、何もすることがありません。入院前からの日頃の疲れと手術の疲れで3日くらいは ほとんど1日寝ていましたが、疲れが取れると ヒマ です。ずっとラジオを聞いてました。ヘットホンステレオだと、2週間の入院中に同じ曲ばかりで聞き飽きそうだったので、ラジオだけ持ち込んでました。
 手術から1週間過ぎればテレビも読書もOkなので、主に本を読んでました。日頃なかなか読む時間を取れなくて、買っただけで途中までしか読んでない本を2冊、1週間あれば余裕で読みきれます。ずっと病室のベッドの上も飽きるので、ときに食堂で本を読んでみたり。

 意外と食事が美味かったですねー。他に病気を持っていないので食事制限が一切なく、味付けは薄味ですが もともと薄味好みなので気にもならず。量は最初は少ないと感じるのですが、入院中はあまり体を動かさないので、そのうちちょっと多いくらいに感じるようになります。さらに日が経つと慣れてきて、不満はなくなります。食事は入院中の唯一の楽しみにもなりかねないので、ここは大切です。この病院では食事はいい物を出すようにしていると主治医から聞きました。

 手術後の数日は洗顔や入力も禁止です。しかしこれらがOkになってもしばらくの間は、洗顔や洗髪は怖いです。


退院後.

社会復帰.

 職業上、目に頼る仕事なので、復帰はさらに2週間後に。このような仕事でなければ、すぐに仕事に復帰してもかまわないそうです。が、いつまでも遊んでいるわけにも行かないので復帰することに。
 まだまだ左目の視力は仕事をするには十分とはいえず、仕事中はほとんど左目を閉じた状態です。左目の乱視がきつく、両眼でものを見ると左目が邪魔で仕方ないので。


通院、抜糸.

 退院してから3ヶ月くらい経ってからだったと思います。最初の抜糸を行いました。これは手術室ではなく、診察室で、通院で行えます。
 3ヶ月くらい様子見て抜く場所を決めて、1〜2本抜いての繰り返しを、ある程度視力が出るまで繰り返し。私の場合は、調整用の糸8本のうち4本を抜いたところで、裸眼視力が0.4〜0.5になり、抜糸を止めることになりました。ただしまだ乱視はきつく、裸眼では文字が読めません。文字が書かれている紙を顔に近づけても、漢字は読めないくらいです。
 そして新しいコンタクトを作るため、テストレンズで視力を測ってみると、矯正視力0.9。おおっ、角膜裂傷以来かつてない視力。ただしまだ普通のレンズなので異物感があります。やっとコンタクトレンズを作れるぞー。


でかいコンタクト.

 角膜移植後は専用の大きいハードコンタクトしか使えないのですが、私の場合は始めてコンタクトを作った25年前から、この専用レンズも取り扱っているメーカーのコンタクトを使用しています。

 2011年8月、地元の医院に戻ってこのコンタクトをさっそく作成。テストレンズでのフィッティングには数種類をとっかえひっかえして、1時間ほどかかりました。しかしちょっと痛みが。まあこれくらいなら慣れるかもと思い、使ってみることに。このときは医師も「まあこれでやってみるか」という感じでした。
 届いたコンタクトを早速使ってみましたが、やはり痛い。異物感が激しい。
 視力は裸眼L=0.5/R=0.08、矯正L=0.7/R=1.5。テストレンズの時よりちょっと落ちました。

 しかしなんとも痛いので、以前と同じようにハードコンタクトの下にソフトコンタクトを入れる方法を試すことに。これで痛みはなくなりました。コンタクトを使い始めたときと同じように3時間/日から始めて、1日で1時間ずつ装用時間を延ばしていきました。
 視力は裸眼L=0.3/R=0.08、矯正L=0.5/R=1.5。コンタクトを使い始めて左目の視力がなぜか落ちた...


拒絶反応.

恐れていたことが.

 9時間に挑戦した日のこと。もうそろそろコンタクトを外す頃になって、左目の視界がいくらか白く濁っていることに気付きました。しかしコンタクトを外すと1時間ほどで元どおりに。怖いので次の日はコンタクト使用中止。
 翌営業日に医院で診察してもらうと、「1回だけでは判断しにくい」とのこと。元に戻るのならと思ってまた使ってみると、やはり2時間くらいで白く濁り始めて、コンタクトを外すことに。
 コンタクトの裏に溜まった涙が交換できないことが原因らしく、新しいコンタクトを作ることに。それが出来るまでの間、使用方法でも改善を試してみました。クッションにしていたソフトコンタクトを止めてみたり、30分〜2時間おきに一旦コンタクトを外して入れ直してみたりしましたが、状況変わらず。コンタクトを入れてから1時間くらいで左目視界が白く濁り始め、コンタクトを外すと1時間ほどで本に戻るの繰り返し。なぜかソフトコンタクトをせずハードコンタクトのみにしたにもかかわらず、痛みはなし。

 新しいコンタクトが届いたので試そうとしたその日、朝から左目が充血していました。その日から充血は続いたまま、結局新しいコンタクトを試すことなく、4日後の夕方にコンタクトを入れていないのに視界が白く曇り始めて、元に戻らなくなってしまい... 左目の視界はほとんど真っ白で、たいして見えない状態に。ももも、もしやこれが拒絶反応?

 翌日医院へ。やはりそうでした。すぐに目薬で治療開始するも、これ以上悪くならなくなったくらい。3日後により強力な目薬に替えたところ、少し回復しましたが、まだまだはっきり見えません。たくさんの泡の中から外の世界を見ているような、細かいボコボコしたレンズを通して見ているような、ヘンな感じになってきました。


再入院.

 偶然にも翌日に角膜移植を行った病院への通院を予定していたので、予定どおりに診察を受けに。その場で「入院して。これならほぼ元どおりに治ると思うよ」と言われました。
 翌日に入院。入院当日から3日間、ステロイドホルモンの点滴を1日1回うち、様子を見るだけ。予定は1週間ですが、残りの日は異変や効果を観察するため。この治療は効果てきめんで、最初の点滴をうった次の日には、はっきりわかるくらいに視界が良くなりました。3回目の点滴をうった次の日には、ほぼ入院前と変わらないくらいに回復。
 ただし、最初の点滴をうった次の朝には、血糖値があり得ないほどに上昇。血圧もちょっと高め。医師から「高血糖と言われたことないよね?」と確認されるくらい。もちろん過去一度もありません。血糖値と血圧は点滴を止めて2日後には平常値に戻りました。

 ついでに抜糸も実施。8日間の入院中に2本抜きました。順調ならちょうど7日で退院できるのですが、抜糸もしたため8日に。このついでに順次、全部抜糸することになりました。
 視力は裸眼L=0.4/R=0.08、矯正R=1.5と、元どおり。

 入院中の生活については、2度目なので慣れたもの。今回は特に入院中の生活については制限もなく、ただヒマな日々でした。


またしてもコンタクトなしの日々.

 抜糸が全部済むまでの間、どうせコンタクトを作っても型が合わなくなるだろうからと、また左目だけ裸眼の日々です。数か月で済むだろうと思っていたのですが、待っていると長い...


コンタクト再作成.

最後の抜糸.

 2012年5月、ついに最後の糸を抜くことに。この最後の糸は縫合部分を一周ぐるりと縫ってあるので、日帰りの手術となります。入院患者と同じように手術の日程に組み込まれ、準備もあるので当日は指定された時刻に病院へ。日帰り手術専用のスペースで手術着に着替え、しばらく順番待ち。順番が近づいたらまな板手術台に搭乗。アムロ、行きマース。
 抜糸前に目の消毒があるのですが、これかまたイタイ。手術台に横になったままで、単純に目を開けたまま生理食塩水を流し込み続けるだけなのですが、まぶたの裏の方まで流し込むし、200mlくらいあるので2分くらい掛かります。最初の20秒くらいまでは気持ちいいのですが、30秒越えたあたりから、ひたすら痛みに耐え続けるだけ。まるで拷問です。このときばかりは、いつもは笑顔でやさしい看護士さんが、ホンモノのSM女王様に見えました。鬼とまでは言いません。移植手術が終わった後の痛みもひどかったのですが、今回もそれと同じくらいの痛みです。
 やっと生理食塩水がなくなったと思っても痛みは続き、結局その日は寝るまで痛かった。

 あとは抜糸直前に点眼麻酔して、手術台ごと手術室へ。
 抜糸そのものは3分程度で終わります。部分麻酔なので天井だけ見えていますが、器具が角膜に触れる度に見える景色がゆがむのもわかります。この3分と比べると、消毒の時間の長かったこと...

 抜糸が終わっても消毒のひりひりした痛みは続き、しばらく起き上がれないほどでした。医師の判断で痛み止めの軟膏を塗ってもらい少し痛みが収まったので、眼帯をしてその日は帰宅。

 翌日、検査のため再度病院へ。ここでやっと眼帯を外せます。それまでは洗顔も入浴も禁止。検査では特に問題はありませんでした。
 しかし、抜糸直後から視力が落ちていることに気付きました。角膜移植した左目は利目ではないですし、抜糸翌日の検査の時までずっと眼帯をしていたので気付かなかったのですが、かなり乱視がひどくなりました。いや正確に書けば、、抜糸前にも乱視はあったのですが、それとは異なりいくつもの像が重なり合っているのがはっきりわかるようになり、結局視力は低下したということに。
 結局、矯正視力は数値の上では圧倒的によくなりましたが、裸眼では角膜移植前と同じくらいの視力です。角膜移植直後から続いていた、近くのものが2割くらい小さく見える現象は、なくなりました。左右どちらの目で見ても同じ大きさ、距離感で見えるように変化しています。

 その後の1ヶ月間ほどでさらに3回の検査。裸眼視力が落ちた以外には何も問題なし。変化なし。
 3回目の検査の時にテストレンズで矯正視力を測ってみました。視力は裸眼L=0.05/R=0.08、矯正L=0.8/R=1.5と、矯正視力は悪くありません。


コンタクト再作成.

 2012年7月、地元の医院に戻り、コンタクトを作りました。1年前の失敗の経験もあるので怖いのですが、抜糸で裸眼視力が落ちたので、視力を取り戻すにはハードコンタクトしかなし。
 今回は少しフラット目にしたコンタクトを試しました。角膜移植後専用の大きいテストレンズを5種類とっかえひっかえして、1時間ほどで決定。1年前のような痛みはありませんが、ちょっと不快感あり。普通のサイズのコンタクトも試してみましたが、装用感はいいのですが、コンタクトが中央に乗らなくて外れそうだし、ちょっとまぶしく感じるし。
 視力は裸眼L=0.04/R=0.08、矯正L=0.9/R=1.5。

 1週間後に届いたレンズを入れてました。痛みはないけど、不快感あり。視力はテストレンズと変わらず、裸眼L=0.04/R=0.08、矯正L=0.9/R=1.5。

 1年前の失敗を繰り返さないよう、今回は慎重にコンタクトに慣らしていきます。3時間/日から始めて、1時間/日ずつ伸ばしていって、とりあえず6時間/日使っても大丈夫そうでした。その6時間/日を1週間続けて様子見しましたが、不快感以外は問題なし。
 次の週は1時間伸ばして、7時間/日に。まだ不快感以外に問題なし。
 さらに次の週、1時間伸ばして、8時間/日に。コンタクトを入れてから時間が経てば不快感が強くなるので、今はこれ以上伸ばさないことに。

 前回通院から1ヶ月後にまた通院。といっても地元の医院は歩いても12分程度なので楽。このとき不快感のことを医師に伝えました。特にエアコンが効いている時期に限って、角膜移植の前から似たような経験があることを、はっきりと説明。涙を増やす目薬を出していただきました。
 視力は裸眼L=0.04/R=0.08、矯正L=0.9/R=1.5。

 2012年10月、手術した病院で不快感のことを話してみると、「できるだけ多く目薬を指すしかない」と言われ、人工涙液の目薬を出していただきました。この目薬を1日5回程度指しながら様子見。しかし相変わらず、不快感が強い。
 それからしばらくして気付いたのですが、どうもVDT作業をしていると不快感が強い。システムエンジニアをやっているのでほとんど1日PCのディスプレイを見ているのですが、この作業を始めて2時間くらいで不快感が強くなり、左目を開けていられなくなります。コンタクトの乾きで部分的に曇って見えにくくもなります。目薬を指すと改善しますが、5分程して目薬が乾くと元どおりの不快感が。
 しかし仕事を終ると1時間もしないうちに、不快感は軽くなり元どおりに。休日家でPCを触っているときはもう少し軽いのですが、似たような状況になることがありました。
 VDT作業をほとんどしない日は、12時間くらいは軽い不快感程度でしかなく、乾きによる多少の曇りはありますが、何とか使っていけるという状態でした。

コンタクト再々作成.

 2013年5月、仕事中の不快感が一向に改善せず、このままではシステムエンジニアを続けていくのは難しいと思い、ダメ元で以前コンタクトメーカーの方から聞いた小さいレンズを試してみたいと医師に申し出てみました。これが最後の手段かも。
 2012年7月にもこの小さいレンズを試したのですが、室内だというのにまぶしくて使えませんでした。縫合部分の盛り上がりが邪魔をしてレンズが黒目の中央に乗らないので、まぶしく感じるそうです。

 後日テストレンズをコンタクトメーカーの方に用意していただいて試してみました。入れてみると意外と不快感は少しだけ。いけるかもと言うことで早速コンタクトを作成、角膜移植後通算3度目のレンズ作成です。
 小さいと言っても実は普通のサイズでした。角膜移植後用のレンズが直径11mmあるのに対し、今回作成したのは直径9.5mmです。

 届いたレンズで視力を測ってみると、矯正L=1.2/R=1.5でした。手元のコンタクトの説明書の文字が読めないのは気になりましたが、予想以上。というか過矯正か、それとも老眼か...
 数日してなれてくると、読めなかった手元のコンタクトの説明書の文字もなんとか読めるようになってきました。えっ、慣れの問題? まだ過矯正の気はしますが、日常生活で困るほどでもなし。2週間後の医師のチェックでも、全く問題なしでした。晴れた野外では目が乾くのかまぶしいのかわからないような感覚になることがありますが、以前に比べれば不快感は圧倒的に少なくなっています。12時間使ってみても、その間ずっとわずかな不快感でしかありません。
 おおっ、やっと日の光が差してきたのかも。

また不快感が.

 2013年7月、予約していたので手術した病院へ通院。そこで「糸のあった箇所に細菌が溜まっている」とのことで、目薬を変えることに。拒絶反応予防のものから、溜まった細菌を殺すものに変更です。コンタクトもこの日から 使えず。もう最後の抜糸から1年以上経っているというのに、こんなトラブルあるんですね。
 きっちり目薬を使っていたので、1週間後には問題はなくなりました。しかし念のためコンタクトはもう1週間だけ使わないことに。

 2週間ぶりにコンタクトを入れてみると、なんだか不快感が増しています。VDT作業によらず、ずっとです。
 え〜、やっとまともになれたと思ったのに...
 ためしに、角膜移植後用の大きいレンズ(直径11mmのやつ)を入れてみても、同じくらいの不快感です。快適だったのはわずか2ヶ月なんて(T_T)

 ハードコンタクトで角膜を押さえつけていれば角膜の形が変わってまた快適に使えるようになるかもと思い、角膜移植後用の大きいレンズにしばらく戻してみることに。これが思ったより快適で、なんだか以前よりいいような気もします。

現在の状態 : 2013/11

 現在は不快感が強くなりそうだったら、目薬を入れるとか、VTD作業を中断して休憩するとかで、何とかごまかしています。それでも毎日コンタクトを使っていると不快感が強い日もあります。特に不快感が強い日は、顔や首の筋肉に力が入るので、肩こりも起こります。それも左側だけ。このような症状があまり強い日の翌日は1日コンタクトを使わないでいると、不快感は元に戻ったりします。
 コンタクトは、角膜移植後用の直径11mmのレンズと、直径9.5mmの普通のレンズを両方とも、適当に使い分けています。

 一応メガネも作り直してみました。メガネ屋では視力測定できないはずなので、行きつけの医院で処方戔だけ書いてもらって。角膜移植した左目の乱視はメガネでは矯正できないので、左は乱視なしです。
 これが、想像以上に見えない。左目は乱視を矯正できず近視の矯正のみなので、ほぼ裸眼と変わりがないのは、メガネを作る前から理解していました。右目の乱視は日によって強いことがあるのですが、その乱視の強い日だと、乱視矯正が不十分で見えにくい。


角膜移植についての私見.

 本章は、実際に角膜移植を経験して、私の思ったことをそのまま書きます。


いつやるべきか.

 円錐角膜と診断された方の中には、ハードコンタクトを使うのが煩わしくて早く角膜移植したいと思っておられる方もあるようですが、間違いです。下記の点で角膜移植を行った後の方が、コンタクトが厄介です。

 もちろん、上記以外にも角膜移植そのものによるリスク(拒絶反応など)も、一生背負うことになります。

 結論として、視力を改善するために、他に有効な方法がなくなるまで、角膜移植は先延ばしするのが最も良いです。延ばしている間に医療技術が進歩してより安全・確実になる可能性もあります。例えば、私の場合は全層移植しましたが、今はエキシマレーザーで表層だけ削って移植する方法もあるそうです。内皮細胞を残せるので、拒絶反応の発生が少なくなるなど、利点があるそうです。いいないいいな、これでやりたかったな。それと「iPS細胞から角膜作って拒絶反応なし」とか出来ないのかなぁ。もともと拒絶反応少ないから、効果少ないのか。
 私の場合は20年先延ばし出来ましたが、ネットで20年ほど前に角膜移植した方の体験を探してみると、先延ばし出来て良かったと実感しています。


患者本人の努力も大切.

 といっても、生物が本来持っている自己治癒能力では円錐角膜は治らないので、医療に頼ることに。
 では何を努力するのか。
 いい医者を探すのか。円錐角膜は内科など専門外の医師だと「はじめて聞く病名」ということもあるみたいですが、眼科医なら誰でも知ってる病気です。

 あたりまえのことなのですが、医者に言われたことを守るだけです。薬の用法を守るのは、角膜移植後は特に大事だそうです。異状を感じないからといって、通院もあまり間隔を空けすぎないように。

 治りが遅くて非常に時間がかかりますので、この点は覚悟しておいてください。私の場合は、拒絶反応があったり、ついでに糸を全部抜いたりしたので、余計に掛かっていると思います。

 円錐角膜、角膜移植とも、症状は個人差が大きいものです。特に角膜移植後にコンタクトをどのくらいの時間使用できるのかは、患者本人にも医師にも予測できないと思ったほうがいいでしょう。実際に無理のない範囲や、無理なく生活できる方法は、自分の体で確かめながら探すことになります。

 医師に正しく症状や自分の意図を伝える努力も大切と感じました。
 医師が患者を診るのは診察の時くらいです。それ以外の時間に起きたことを正確に伝えられる会話力も必要です。不快感などの主観的な事柄は、検査などではわかりませんので、これもどれだけ伝えられるかが、治療に影響します。
 通院のついでに相談したいことがあるなど時間がかかりそうなら、患者の少ない日・時間帯を選んでみるとか。これなら医師もわりと快く応じてくれるようです。


あきらめも必要かも.

 コンタクトを使える時間やVDT作業の有無・時間は、そのまま生業にも影響します。医師の言う「日常生活」にはVDT作業は含まれていないので、VDT作業が必要な生活を送る人なら、意図的にVDT作業のことを医師に伝え、確認する必要があります。
 視力に頼るような仕事、VDT作業中心の仕事なら、円錐角膜の症状の進行や移植後の状況によっては、生活に影響します。影響を受けにくい生活に変える必要が出るかもしれません。


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