方言について

医療と方言プロジェクト

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    言語聴覚士のための方言データの公開を始めました。詳しくは医療と方言プロジェクトのページへ
熱気球から見た白馬三山

 

美ヶ原・美しの塔

WORKS

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    言語の伝播に関すること

    陸上伝播と海上伝播

    普通、言葉は陸上を伝わっていきます。人から人へ、地面をはうようにして伝わってゆくのが伝統的な言語の伝播のやり方です。ということは、川や高い山、そして海などは伝播を阻害する要因として働くことになります。 人の自由な往来を阻むものは、言語伝播の障害とも成りうるのです。言語島も、山中にあることが多いです。

    ただ、海の場合は、かえってそれが人の自由な往来を保証していることもあります。たとえば、新潟県の佐渡島の方言は西部方言的であると言われます。そこで、かつての航路を調べてみると、能登と佐渡が航路で結ばれていたということがわかります。佐渡の対岸の新潟県は東部方言なのですが、海上交通を考えると、佐渡は西部方言になっているのです。どこにあるかということよりも、人がどう動いたかが肝心なようです。
    また、風の名前なども、海を隔てて広まりを見せている語もあります。アユ系の風の呼び名は、広く日本海沿岸に分布を見せています。

    川が言語を運ぶ場合もあります。普通は伝播の障害となるのですが、利根川の下流において、銚子から上流へ向かって流れ込んでいるとしか思えない事象がいくつかあるという報告があります。 水上交通で言葉が動いていった姿です。 交通システムの発展で、これからことばはどのように動いてゆくのでしょうか。

    道沿いに分布する例「チングー」

    水運だけではなく、陸上の道路を通じての伝播もあります。
    例えば、山口県の日本海側の漁師の言葉に「チングー」というのがあります。 この「チングー」という語、どうやら韓国語「チング」のようです。 さて、先にこの「チングー」が漁師の言葉であると述べました。が、よく調べてみると、瀬戸内海側(徳山市以西)の漁師もこの語を持っていることが分かりました。 しかしそれだけではないのです。日本海側と瀬戸内海側を結ぶ道沿い(防府ー山口ー益田)にもところどころ分布があります。 海岸から魚の行商人がこの道を往来していたようです。これが、山間部に分布を見せた理由なのでしょう。

    さて、この「チングー」ということば、熊本県の天草にもあるそうです。なぜだと思いますか? 

    学校ごとにことばは変わる?

    全国複雑分布という分布があることを書きました。これは、そう難しいことではなく、言語地図を見ると複数の事象が入り乱れていて、明確に分布の範囲が確定できないという分布です。

    さてこのような分布を見せる語は「おたまじゃくし」「肩車」「じゃんけん」「めんこ」「お手玉」のような語で、よくよく調べてみると、小学校の通学範囲と一致していることがあります。

    こんな覚えはありませんか? 例えば隣の小学校の人と話したら、遊びの名前が違っていたり、場合によってはルールが違っていたり・・・ 学校の通学区とことばは、特に子供の遊びの場合、かなり影響があることが多いのです。また、「キャンパスことば」と言って、大学ごとに独特の用語があることも数多く報告されています。

    通っている学校ごとに使われている独特の言葉を調べて、どういう意味分野に独特の言葉が多くあるのか考えてみると、小さな研究ができそうです。

    ことばの伝わる速度

    方言周圏論というのがあります。すべての方言がそうであるとは言えないのですが、簡単に言えば、中央から離れたところにある場所の方言ほど、昔の日本語の姿をとどめている(つまり、古い)という考え方です。

    中国地方に「~しなかった」という場合の言い方で「~せなんだ」という言い方があります。例えば「行かなかった」という時、「行かなんだ」というわけです。さて、この「なんだ」という語、分布領域は京都から半径330kmの円内におさまっているのです。 この「なんだ」は、1477年に書かれた「史記抄」という書物に初めて出てくる語です。1477年という限定はつけられませんが、少なくとも、どうやらこのあたりの時代に発生した(もちろん京都で)語だろうと考えられるのです。 少しばかりの誤差も考えると、約550年で330kmの距離を「なんだ」という語は伝わっていったことになります。そこで330を550で割ると、0.6。単純に考えて、1年間に0.6kmの速さで言葉が伝わっていったらしいことがわかります。テレビなどのなかった時代、新しい言葉が伝わって、それがある地域で一般的になり、また次に伝わってゆく、ということを考えるとこれくらいのスピードが適当なのでしょう。

    徳川宗賢先生は、「日本言語地図」という全国版の方言地図の中から27語の語を選んで、先のような方法を使って言葉の伝わる速さを計算しました。語によって速いものと遅いものがありますが、平均速度を地方別に表すとこんな結果が出ています。

    近畿を中心として
     東海道方向 0.75km
     北陸方向  1.06km
     中国方向  1.10km
     四国方向  1.23km
     南近畿(和歌山など)方向 0.49km
      *いずれも、1年あたりの速さ

    すべての平均で年速約1kmというところです。 これに比べて、現在の流行語の伝わることの速いこと、速いこと。日本も狭くなりました。そして、何と言ってもマスメディアの影響は大きいですね。

    白馬村・熱気球で離陸上昇中

     

    白馬村・黒菱林道の紅葉

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